成分の分類名は「機能の名称」として、家庭用品品質表示法による製品の成分表示に使われています。
製品によっては、この他にメーカー独自の成分として、抗菌成分・柔軟成分・防臭成分・ケア成分といった言葉が使われていたりもします。
ここでは主な洗剤の成分について見ていきましょう。
洗剤にはどんな成分が入っている?
1、界面活性剤
洗剤の主成分である、主に洗浄作用を持つ成分。
ひとつの分子内に、水に馴染みやすい「親水基」と油に馴染みやすい「親油基」を併せ持つ物質の総称です。
まずは、シンプルで分かりやすい「石けん」の界面活性剤の形を見てみましょう。
棒状の部分が「親油基」です。石けんでは動植物の油脂から、その他の界面活性剤では動植物の油脂を加工したものや石油を原料にしたものから出来ています。
そして、マッチ棒の先っぽのような部分が「親水基」です。この図ではNaイオンが電離して、マッチ棒の先っぽのような部分がマイナスに帯電していますね。このように、水に溶けた時に親水基の部分が帯びる電荷によって、界面活性剤の性質は大きく4つに分けられます。
■ 陰イオン界面活性剤 (アニオン界面活性剤)
水に溶けたとき、親水基がマイナスの電荷を帯びる界面活性剤です。
洗浄力に優れ、泡立ちも良いものが多い界面活性剤です。身体洗浄用・掃除用・洗濯用など、生活の中で幅広く使われ、一番なじみ深い界面活性剤といえます。
水中の硬度成分であるCaイオンやMgイオンと反応しやすく、洗浄力を失ってしまうという特徴があります。
石けんは、この陰イオン界面活性剤に分類されます。
■ 陽イオン界面活性剤 (カチオン界面活性剤)
水に溶けたとき、親水基がプラスの電荷を帯びる界面活性剤です。石けんと逆のイオン性になっているため「逆性石けん」とも呼ばれます。
繊維や髪など、マイナスに帯電しているものに強く吸着する性質があります。規則正しく親油基を外に向けて繊維や髪などの上に並ぶため、表面は平滑性と潤滑性が生まれ、それを生かしてリンスやトリートメント、柔軟剤として使われています。
柔軟剤を使うと吸水性が悪くなるのは、このように繊維の表面が親油性の物質に覆われてしまうからなのです。
特に親油基の短いものは、生物の細胞膜に対してたんぱく変性作用を強く持つことから、殺菌剤や消毒剤として使われています。
■ 両性イオン界面活性剤
水に溶けたとき、プラスの電荷を帯びる部分とマイナスの電荷を帯びる部分をひとつの分子内に持つ界面活性剤です。どちらになるかは液性によって決まり、水がアルカリ性の時は陰イオン界面活性剤に、水が酸性の時は陽イオン界面活性剤になり、中性域では非イオン界面活性剤のような性質を示します。
他のイオン性界面活性剤と比べ、皮膚刺激が少ないとされています。イオン性界面活性剤と組み合わせてその働きを補助したり、刺激性を和らげたり目的で使われることが多いです。
シャンプーや洗顔料の泡持ちを良くするために、化粧品材料に、また帯電防止剤としてヘアケア製品に使われたりしています。
■ 非イオン界面活性剤 (ノニオン界面活性剤)
水に溶けても、イオンに解離しない界面活性剤です。電荷を持たないため、水中のCaイオンやMgイオンと反応せず、他の界面活性剤との併用もできます。
親油基だけではなく親水基の大きさも調整できるため、親油基と親水基のバランスを容易に調整でき、多くの種類や用途があります。起泡性が小さいため洗浄用には単独で用いられることは少なく、陰イオン界面活性剤と組み合わせて用いたり、乳化剤として食品や化粧品に多く使われたりしています。
また、他のイオン性界面活性剤は、水温が下がり過ぎると親油基同士が結晶化してしまい界面活性作用を発揮できなくなりますが、非イオン界面活性剤は逆に、水温が上がり過ぎると界面活性作用を失います。(水素結合が切れるため親水基部分が水分子に溶けにくくなるため。溶液が白濁します。)
2、水軟化剤
水の硬度成分であるCaイオンやMgイオンなどの多価陽イオンを捕捉して、水の硬度を下げる成分です。
このような金属イオンは、陰イオン界面活性剤と強く結びつき、洗浄の性能を低下させてしまいます。また、繊維に付着して汚れを取れにくくしてしまいます。
アルミノけい酸(ゼオライト)・ポリカルボン酸
3.金属封鎖剤
キレート剤ともいわれます。製品の製造装置から溶け出したり原料に含まれていたりして製品の中に存在する微量の金属を捕えて集める成分。製品の変質・沈殿など品質の低下を防ぐために配合されます。
また、陰イオン界面活性剤と水中の硬度成分によって洗濯中に生成されるCa塩やMg塩(金属石けんと言われる白い粉)を水に溶けやすくする作用もあります。
エデト酸・クエン酸・EDTA(エチレンジアミン四酢酸)・DTPA塩(五塩基性塩)・グルコン酸ナトリウム・HEDP塩(エチドロン酸)・ASDA(L-アスパラギン酸二酢酸)
4、pH調整剤
製品の液性を安定化させます。また、製造時の製品の液性調整に使われます。
アルカノールアミン・エタノールアミン・水酸化ナトリウム・クエン酸・塩酸・ギ酸
5、アルカリ剤
洗濯液を汚れ落ちのしやすい適度な液性に保つ成分です。油やたんぱく質の洗浄に向くアルカリ性に保つために、アルカリ緩衝作用を持つものが使われることが多いです。
炭酸ナトリウム・けい酸ナトリウム
6、分散剤
再汚染防止剤ともいわれます。一度洗濯液の中に溶け出た汚れが、再び洗濯物に付着しないよう、汚れを洗濯液の中に分散させます。繊維と汚れの両方に吸着して両者の電気的反発力を高めることにより、再付着を防いだり、汚れを洗濯液中に安定して分散させたりします。
ポリエチレングリコール・CMC(カルボキシメチルセルロース)ナトリウム塩・ポリアクリル酸ナトリウム・アルコキシル化ポリエチレンイミン
7、泡調整剤
泡立ちが望まれる場合とそうではない場合があり、起泡・泡の安定化・抑泡・消泡など、目的に応じて配合されます。
抑泡剤としては、節水型洗濯機やドラム式洗濯機において、洗濯の時の過剰な泡立ちを抑えたり、すすぎ時の泡切れを良くしたりする成分をいいます。
石けん・シリコン
8、溶剤
遊離脂肪酸や皮脂成分などを溶解するための有機溶剤です。洗濯用の洗剤には「溶剤」として用いられることは少ないですが、お風呂用洗剤などによく用いられています。
ブチルカルビトール
9.安定化剤
液体洗剤において凍結、成分の析出・分離を防ぎ、保存安定性を高める成分です。
エチルアルコール・ブチルカルビトール・αートルエンスルホン酸・亜硫酸カリウム・クエン酸・HEDPナトリウム塩・プロピレングリコール(PG)・塩化カルシウム・ホウ酸塩・水添ヒマシ油・クメンスルホン酸ナトリウム
10、酵素
界面活性剤では除去が困難な広い面積で付着した汚れや、繊維の奥に入り込んだ汚れを小さな単位に分解する成分です。
プロテアーゼ(たんぱく質分解酵素)・リパーゼ(脂質分解酵素)・アミラーゼ(デンプン分解酵素)・セルラーゼ(繊維素分解酵素)
11、蛍光増白剤
蛍光染料を指します。紫外線が当たると青紫色に発光し、黄色味を帯びたものを白く見せる効果のある成分です。
白い生地は、もともと製造時にこの蛍光増白剤を使って処理がされていますが、着用や洗濯を繰り返すうちに落ちていくので、洗濯時に補う目的で配合されています。
生成りや淡い色合いの衣服は、これを使うと風合いが変化してしまうので避けたほうが無難です。また使用量が多いと白い衣料がくすむので注意が必要です。
また、発ガン性やアレルギーを引き起こす危険性が指摘されています。
スチルベン系増白剤
12、漂白剤
色素汚れを化学反応によって分解する成分です。洗濯用洗剤に配合されているものは、主に酸素系漂白剤です。
過酸化水素水・過ホウ酸ナトリウム・過炭酸ナトリウム
また、漂白剤と共に用いられることで高い漂白効果を発揮する漂白活性化剤があります。DOBA(デカノイルオキシ安息香酸)・TAED(テトラアセチルエチレンジアミン)
13、酸化防止剤
成分が酸化されることを遅らせ、においや色の変化を防ぐ成分です。
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