実際の製品ではどのように表示されている?
製品にある成分表示だけでは、配合されている成分を正しく把握することはほとんど難しいです。
しかし、各製品のホームページ上には、日本石鹸洗剤工業会の「成分情報開示に関する自主基準」に基づいたさらに詳しい成分情報が公開されています(公開の程度もメーカーによりけりです)。
お使いの洗剤だけでも確認してみることで、また理解が深まるかと思います。
ホームページ上で公開されていない成分に関しては、メーカーに問い合わせると教えていただける場合もあります(対応の程度もメーカーによりけりです)。
ぜひ一度調べてみてください。
まず、ある製品の成分表示を見てみましょう。
前述の家庭用品品質表示法に基づいて成分が表示されています。
界面活性剤が合わせて52%、4種類が載っています。
52%というのは、この製品の全成分に対する界面活性剤の割合です。
「洗濯用合成洗剤」と書いてありますね。
この52%の界面活性剤のうち「石けん以外の界面活性剤」が30%以上含まれているため、この製品は「洗濯用合成洗剤」に分類されるわけです。
他には安定化剤、pH調整剤、酵素。
成分は、配合量の多い順に表記されていますが、性能向上剤である「蛍光増白剤」「酵素」「漂白剤」の3つに関しては配合量に関わりなく、このように必ず記載することが義務付けられています。
この製品の成分表記は、一見したところ、とてもシンプルですよね。
前述しましたように、ここには、家庭用品品質表示法で表示が義務付けられていない成分は載っていません。しかし、こちらのメーカーのホームページでは、最初に挙げた「日本石鹸洗剤工業会の「成分情報開示に関する自主基準」に基づいて詳細な成分情報の公開がなされています。
上の製品のメーカー開示成分情報はこちらです。
機能名称 |
成分名称 |
バランス剤 |
水 |
界面活性剤 |
ポリオキシエチレン脂肪酸メチルエステル |
界面活性剤 |
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸 |
界面活性剤 |
ポリオキシエチレンアルキルエーテル |
界面活性剤 |
アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム |
安定化剤 |
安定化剤 |
界面活性剤 |
脂肪酸塩 |
安定化剤 |
エチルアルコール |
pH調整剤 |
アルカノールアミン |
再汚染防止剤 |
再汚染防止剤 |
香料 |
香料 |
酵素 |
酵素 |
安定化剤 |
安定化剤 |
安定化剤 |
クエン酸 |
分散剤 |
分散剤 |
再汚染防止剤 |
再汚染防止剤 |
酸化防止剤 |
BHT |
防腐剤 |
防腐剤 |
pH調整剤 |
水酸化ナトリウム |
着色剤 |
着色剤 |
界面活性剤は、製品の成分表示にあった4つ以外に「脂肪酸塩」があることがわかります。(製品の成分表示欄には限りがあるため、別途製品ホームページ内で案内をしているとのことです。)
安定化剤は、7つの成分が配合されています。そのうち4つは公開されており具体的な成分名が分かりますが、あとの3つは非公開の成分です。
また、製品の成分表示には「安定化剤」としか表記されておりませんので、これらの成分はそれぞれ10%未満の配合だということが分かります。(逆に言えば、10%未満の配合量にしておくことで公開の義務がなくなるということです)
pH調整剤は、3つの成分が配合されていることが分かります。
全ての成分名が公開されています。
これらも同じようにそれぞれ10%未満の配合です。
酵素は含有量に関わりなく表示の義務のある成分ですので、製品の成分表示にも記載がありました。この表は、1%以上配合されている成分(製品の成分表示に記載のある成分)は重量順に記載されておりますので、おおよそではありますが含有量を推し量ることは可能です。(この製品で1%未満の含有率)
その他、製品の成分表示になかったものは、香料、抗菌剤、酸化防止剤、水軟化剤、防腐剤、着色剤です。これらは含有率が1%未満であるということになります。
日本石鹸洗剤工業会の自主基準においては、香料・着色剤・防腐剤に関わる全ての成分はまとめて表示し、公開しなくても良いとされています。
また、営業秘密に関わる成分に関しては、表示義務のある成分でなければ具体的な成分名を公開しなくても良いとしています。この製品において具体的な成分名が公開されていないものに関しては、日本石鹸洗剤工業会「自主基準」のこの項目に該当しているとのことです。
もうひとつ、別メーカーの製品も見てみましょう。
まずは同じように製品の成分表示です。
界面活性剤が58%、高級アルコール系(非イオン)との表示です。
他には安定化剤、分散剤、漂白剤ですね。とてもシンプルです。
そして、メーカーサイトで公開されている成分情報の詳細はこちらです。
成分名称 |
機能名称 |
水 |
バランス剤 |
ポリオキシエチレンアルキルエーテル |
界面活性剤 |
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル |
界面活性剤 |
ブチルカルビトール |
安定化剤 |
トルエンスルホン酸塩 |
安定化剤 |
過酸化水素 |
漂白剤 |
脂肪酸 |
界面活性剤 |
第四級アンモニウム塩 |
界面活性剤 |
アクリル酸系共重合物 |
分散剤 |
エチドロン酸塩 |
金属封鎖剤 |
香料 |
香料 |
界面活性剤は全部で4つ入っています。このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、製品成分表示の「高級アルコール系(非イオン)」に当たります。(「高級」とは親油基の炭素数が多い、ということを指しており、決して「質の良い」といった意味ではありません→石けんの界面活性剤の構造は?)
第四級アンモニウム塩は陽イオンの界面活性剤、脂肪酸塩は陰イオン界面活性剤です。
製品成分表示には書いてありません。
界面活性剤については、3%以上含まれているものを表記することになっています。この製品の場合は3%以上にも関わらず表記していないのか、それとも3%未満で表記しなくてもいいのかは、メーカーからの回答が得られず不明です。
安定化剤は2つの成分が使われており、どちらも具体的な成分が表記されています。また、どちらも製品の成分表示にはありませんから、10%未満の含有率だということが分かります。
漂白剤は家庭用品品質表示法により、含有率に関わらず表記が必要なものです。
(先の例と同じく、洗剤の成分の中の性能向上剤である「蛍光増白剤」「酵素」「漂白剤」は、このように製品の成分表示の最後に記載されています。)
「分散剤」が製品表示成分に書かれていますので、ここまでは1%以上の含有率の成分だということになります。(アクリル酸系共重合物は陽イオン界面活性剤をカチオンポリマー化して他の界面活性剤と反応しないようにするためのものです)
1%未満の含有率の成分は金属封鎖剤と香料です。
そして、こちらの製品では、香料以外の成分は全て物質名が公開されています。
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