タンパク質変性作用による皮膚刺激
タンパク質は約20種類のアミノ酸から出来ており、タンパク質を持たない生物はいないといわれるほど、体を構成する重要な成分です。
アミノ酸は、アミノ基とカルボキシル基の両方を持つ有機化合物です。
このアミノ酸がペプチド結合(-CO-NH-)により重合して1本の紐状のポリペプチド鎖を作っており、このポリペプチド鎖が1本から多数結合して折りたたまれたものがタンパク質です。
疎水結合・ジスルフィド結合(-S-S-)・水素結合・イオン結合・静電気力などの相互作用が、その結合に使われています。
この結合が破壊され、ペプチド鎖が緩んで元の機能を失ってしまうことがタンパク質の変性です。タンパク質の変性は、熱や圧力・pH・変性剤などによって起こります。
界面活性剤は、ポリペプチド鎖の水素結合・イオン結合・静電気力などに作用しタンパク質を変性させます。
特にその作用の強いアルキル硫酸ナトリウム(陰イオン)、アルキルトリメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩(陽イオン)などは、タンパク質変性剤として細胞膜の破砕にも用いられているものです。
両性イオン界面活性剤はタンパク変性作用は穏やかで、非イオン界面活性剤はさらにその作用は弱いといわれています。しかし、親水基と親油基を持っている構造上、このタンパク変性作用がまったくないとは言い切れないようです。
また、このタンパク変性作用ではなく、脂質-脂質間・タンパク質-脂質間の相互作用を破壊する作用は、細胞を包む脂質二重層を破壊させるためにも利用されています。
この脂質二重層を破壊させる作用は両性イオン界面活性剤にも非イオン界面活性剤にもあり、「膜タンパク質可溶化剤」として、タンパク質の機能を維持しつつ細胞を溶解する必要のある場合に選択して使われているのです。
このような作用で、皮膚の一番外側で外界とのバリアとなっている常在菌がダメージを受け、皮膚はバリア機能のひとつを失います。
そして、界面活性剤の脱脂作用により、もう一つのバリア機能である皮脂も落とされると、表皮の細胞が直接ダメージを負うことになるのです。
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