皮膚はその面積が成人で1,6m2あり、厚さは場所によって1.5〜4mmあります。
皮膚は体温の調節と維持、汗(塩分・アンモニアなど)や一部の有害脂溶性物質の排泄、外界の刺激からの保護、保湿など、体にとって大切な役割を担っています。また、痛み・温度・圧力などを感じ取る感覚器官でもあることから、人体で最大の臓器ともいわれます。
皮膚の構造を見てみましょう
外側からまず、0.2mm厚の表皮。
次に、その10〜15倍の厚さの真皮。
そして、皮下組織。
皮膚は大きくこの3つから成り立っています。
表皮の下の真皮になると、すぐそこに血管・リンパ・神経などがあり、毛根・汗腺などの付属器官もあるため、外界のさまざまなものから体を守るバリア機能は、主に表皮が担っています。
表皮のうちでバリア機能にもっとも大切なのは角質層です。
表皮の一番底の基底層で細胞分裂をしたケラチノサイトは、形態や性質を変化させて分化し、表面に向かって押し出されて移動していきます。
この表皮のうち、角質層は一番表面にあり、その厚さはわずか0.02mm。
この角質層は、角質細胞と細胞間脂質から成り立っています。
角質層の角質細胞は、ケラチンというタンパク質が主成分です。ケラチンは水を含むと柔らかくなる性質があります。
また、角質細胞の中にはNMFと呼ばれる天然保湿因子が含まれており、角質細胞の水分保持力をあげて肌を柔軟に保つのにも役立っています。
このような角質細胞はデスモソームという糖タンパクの一種でつなぎ留められ、シート状になった角質細胞は外界からの刺激に対する機械的強度を持ちます。これが10〜20層重なり、角質層が形成されています。
この角質細胞の隙間ですが、水分保持効果のある細胞間脂質で満たされています。
この細胞間脂質はセラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、コレステロールエステルなどの脂質から成ります。
油である細胞間脂質がなぜ水分保持効果があるのかというと、細胞間脂質の主成分であるセラミドが界面活性作用を持っているからです。ラメラ構造をとったセラミドは、親水基部分で水分を、親油基部分で脂質を保持しています。
このセラミドの脂質二重層による水分保持ができないと、角質細胞も乾燥してしまいます。
そして、正常な状態を失った角質層は、バリア機能もうまく働かなくなってしまうのです。
アトピー性皮膚炎の人は、このセラミドを作るメカニズムがうまく働かないために角質層が維持できず、バリア機能が失われているとも言われています。
また、乳児期〜幼児の頃は角質層が薄く、成人になるにつれ厚くなっていきますが、老齢化すると角質細胞自体が薄く平べったくなり水分を蓄えづらくなってきます。
また角質層に加え、皮膚の一番外側にある皮脂膜もバリア機能に大切なものです。
この皮脂膜は、肌機能が正常な人でもわずか0.0005mmの厚さしかありません。
皮脂膜は、皮脂腺から分泌される皮脂を肌の常在菌が分解し脂肪酸にすることで作られており、pH5.2〜5.8の弱酸性を保ち、殺菌作用と保湿効果を担っています。
目次へ戻る 前ページへ 次ページへ